《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「それじゃあ、どうぞ」
一子がケーキをフォークでさして秀馬の口元へ運ぼうとした時、
「あら! ごめんなさいね〜」
誰かが一子の肘にぶつかってきて、床にマーブルシフォンが落ちていった。
「あ」
「あれ、あなた…確か、そうだ。いもの子よねー? やだ、あなただったんだぁ」
ぶつかってきたのは、長峰仁美だった。
「秀馬さん、ここにいたの? 探したわ」
仁美が秀馬に抱きついて、これ見よがしに一子へ視線を向ける。
首にまわされた仁美の手をやんわり外しながら「酔ってます? 仁美さん」と優しく接する秀馬。
「うん、秀馬さん。そばにいてくれる? 仁美、倒れちゃう〜」
甘い鼻にかかる声だ。
「秀馬さ〜ん」
仁美は、秀馬の後頭部を引き寄せ、頰にキスした。
ーーーあ、キスした。
唖然とする一子を置いて、秀馬は仁美を抱き抱えてどこかへ行ってしまう。
ーーー芸能人ってすごい。さりげなくキス出来るんだもん。
感心しながらも何か心にわだかまりを感じる一子は、唇を噛んで震える手でケーキの乗った皿を持ち上げた。