《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「歩、帰る時間少し伸ばせないのか? 色々発表もあるみたいだぞ。店長の発表とかさ」
耕三の言葉に顔色が悪くなったように見える歩。
「……耕三さん、俺」
歩が耕三を見た。
「耕三さんが思ってるほど、強くないっすから」
「歩?」
頭を下げる歩。
「行こう、一子ちゃん」
一子の肩を掴む歩の手には力が入っていた。
ーーー歩さん、悲しい顔してる。
会場を出ていく歩と一子。2人の後ろには楽しそうな笑い声やクリスマスソングが聞こえていた。
背中で扉が閉まると、音楽もパーティーを楽しむ人たちの声も小さくなっていき、やがて聞こえなくなった。
「一子ちゃん、なんか俺さ〜辛気臭くてごめん」
Hotelの外へ出て、首をすくめながら暗い空を見上げる歩。
「ううん、楽しかったです。ありがとう。歩さん。これも……ありがとう」
一子は、さっき歩にもらったクリスマスプレゼントの手袋をはめてみせた。
元気のない歩に喜んでほしくて、すぐにはめた。喜んでいる所を見てもらいたかった。
だから、あらかじめ一子は化粧室へ行ったときに箱から出した手袋をバッグにしまっていたのだ。