《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
パーティーを無事に終えて、やはり見つけられなかった一子にメールを送る。
ーーー無事に家へついたかな。
「秀馬、乗らないのか?」
タクシーに乗ろうとしていた耕三が秀馬を振り返る。
「ああ、先に行ってくれ。酔い覚ましに歩いて駅に行くから」
スマホをコートにしまい、秀馬はすでにタクシーに乗り込んでいた麻耶へ屈んで顔を向けた。
「麻耶、フランスに帰る前にまた会おう」
「えぇ、秀馬。その時は彼女も連れてきてね?!」
「彼女?」
麻耶の隣に座った耕三が、にやりと笑う。
「例の『ホントになんでも無い』彼女だよ。歩の隣にいた女の子、たしか一子ちゃん」
「会ったのか?」
タクシーのドアが閉まり、パワーウィンドウがさげられた。
「ああ、癒し系の子だな。秀馬、ちょっと」タクシーの中から手招きする耕三。
窓に近寄ると耕三が小さな声で言う。
「秀馬いくつになった?」
「35」
秀馬の答えに偉そうにふむふむと頷く耕三。
「いい加減、じれったいのとか恥ずかしいぞ、秀馬。俺の親友、真田秀馬ならガンガン行くはずだからな」
「どっかで聞いたセリフだな」
秀馬が前にじれったい耕三へ言った言葉に似ていた。
「気のせいだろ。…それより秀馬。歩がさ今日は奮発して、なんでも一流ホテルを予約してあるとか言ってたよな? 麻耶」
眉間にしわを刻む秀馬。
「嘘言うな。どうせ麻耶がフランスに帰るって嘘ついた仕返しか何かのつもりだろ」
両手を広げて「WHY?」とでも言うように肩をすくめる耕三。
隣にいた麻耶が顔をのぞかせ
「耕三は嘘つかないわ」と真面目な顔で言う。
ーーーなんだと?! 一流ホテル?歩が?
「じゃあな」
ウィンドウが上がり、走り出したタクシーを秀馬は唖然として見送っていた。