《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
キスのあと、顔を上げた先に黒い雨合羽を着た男が立っていた。フードをかぶっているせいで顔が見えない。
フードの先から滴り落ちる水滴。
思わず、秀馬は恐怖に身震いする。それほどその男から殺気が漂っていたのだ。
ーーーなんだアレ? カマかナイフでも持っていたらホラー映画の殺人鬼みたいな男だな。
「お前、だれだ」
殺人鬼とおぼしき男が聞いてきた。
ドスの効いた低すぎる声に、背中を向けていた一子も振り返る。
そして、秀馬が更に身を凍らすような言葉を一子が放った。
「お父さん!」
ーーー殺人鬼が、お、お父さん! だと?
ゆっくり一子から手を放したものの、一子の父親からの殺気が消えることはなかった。
「だれだ。お前」
「お父さん、この人は…」
「一子には聞いてねぇ! そいつに聞いてんだよ!」
ズカズカと青い長靴で突き進んでくる一子の父親。
「あの、初めまして、真田秀馬です」
「お前、人の娘に手を出したな? あ?」
一子の腕を掴み、自分の方に引き寄せる父親は、ギロリと秀馬を睨んだ。
「ついてこい!」
秀馬に怒鳴り、一子を連れて家の方に向かう父親。