《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「真田さん、大丈夫ですか?」
ぴょんと飛び出してきたのは、一子だった。玄関扉では無いところから出てきたようだ。
「一子!」
村山父の声が聞こえてきた。
「行きましょ! 真田さん!」
一子に腕を掴まれて、一子と共に走り出す秀馬。
サラサラと流れるみたいにふる雪の中、走り続ける一子と秀馬。
途中、泥が跳ねてピシャと音がした。顔に雪が降ってきて、冷たくなってくる。
それでも走った。
やみくもに走る。弾む白い息。
秀馬は、自分の腕を掴む一子の手を反対側の手で掴み、一子の冷たくなった手を自分の手で覆った。
走りながら秀馬を見上げてきた一子。そんな一子に精一杯の笑顔を返した。
ーーきみが好きだ。とても好きだ。
今ならどんな事にも感動できる自信がある。
顔に嫌っていうほど降る雪も嫌じゃないんだ。かじかんでくる手の指もきみがいれば嬉しい。
手の冷たくなる感覚がわかる。顔の冷たさがわかる。生きているってわかる。
俺は生きてるんだって、当たり前の事にきみといると感動できる。
秀馬は、一子の手を握る指に力を入れた。
ーーーだから、きみのそばにいたい。いさせてほしい。
隣を走る一子の顔を見つめる秀馬。
雪の積もり始めた道路には、うっすらと2人の足跡が残っていった。