《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「わたし、憧れです。こんな高層マンション! ほら見て!」
背伸びをして空へ手を伸ばす一子。
「空にだいぶ近づいた感じがする!」
「わかった。わかったから…もう少し中へ入ってくれ」
一子の体がバルコニーから落ちたりしないように一子のすぐ近くに立つ秀馬。
部屋に入ってからも、羨ましがる一子。
「真田さんは幸せですねー。いつも星の近くにいられて」
あいにく雪模様の今夜は星が見えなかった。
「そうか? なら、ずっといるか?」
秀馬としたら軽い冗談のつもりだった。
なのに、真顔になる一子を見て慌てた。
「真顔になるなよ。ちょっと言ってみただけだ」
「わかってます。いただきます」
温かいココアを入れたマグカップを両手で包みこみ、ふうふうと息をかけている一子。
「お義父さん、心配してるんじゃないか? 連絡しておいた方が……」
「大丈夫です。三津子に連絡しましたから」
「俺の家にいるって言ったの?」
「……まあ」
「なんか言ってこなかった?」
三津子なら余計な事を言いそうだと思った。不安な気持ちでコーヒーの入ったカップを持ち、一子の隣へ座った。