《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
テーブルの上を見回し、秀馬は何回か瞬きを繰り返した。
ーーーない。ない。まさか、あんなにあったのに?
テーブルの上にある白いタッパーの中には、何も無くなっていた。
秀馬は、タッパーを持ち上げてタッパーの底を確認する。
ーーーない。
テーブルの下も覗いてみる。
ーーーない。
パスタを食べている女性スタッフに秀馬は聞いた。
「天ぷらは、美味かった?」
作り笑いを見せる秀馬に、女性スタッフは、ハッとした顔になった。
「すみません。……食べちゃいました」
「いや、いいんだ。みんなに食べてもらえるくらい一杯あったから……で、美味かった?」
「はい、とっても。ホクホクしてて」
ーーーホクホク……。
秀馬は、眉毛をピクピクさせた。
「そりゃあ、良かった」
ーーー俺は、一つも食べていないからわからない。ホクホク……。
かえって無くなってて良かった。あったら、食べる羽目になっていたところだ。
ははっ、良かった。イモ天なんか俺のイメージじゃない。なんだ。良かった。
なんとなく少しだけ肩を落としたような秀馬を見て、パスタを食べていたスタッフ達は顔を見合わせていた。