《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
23日。
朝からいつもと違うことと言えば、歩だ。
あの話好きの歩が今日に限って、挨拶しかしてこない。
ーーー明らかに避けてるな。
それも仕方ないことだ。俺は、歩が先に好きになった女を後から好きになってしまったのだから。手を出さないという約束も守れなかった。
ーーーだが、相手が歩だからこそ、嘘はつけない。そう思ってきた。今は、仕事に集中しよう。
イブを前に結構店は混んでいた。aubuに来たお客様が皆幸せになれるように俺はベストを尽くすべきだ。
全てのお客様がお姫様や王子様になれるように魔法をかける。
秀馬は、客に鏡を見せ「いかがでしょう?」と微笑んで聞く。
ーーー出来るなら、みんなが幸せな笑顔でイブを過ごせるように……。
客を見送り、ふと歩を見ると一心不乱に女性客の髪をカットしていた。
ーーー全員が幸せなイブを迎えることは、やはり無理なんだろうか。
秀馬は、首の関節をバキッと鳴らして次の客を呼んだ。