《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「聞こえてました? デートですよ。イブですからね〜、やっぱり一人じゃわびしいっすもん」
歩が秀馬の前に顔を見せる。
「ああ、そうか。で、誰と」
「もちろん、一子ちゃんとですよ」
顔は笑っていたが、歩の目は笑って見えなかった。
「まさか」
「そんな言い方は、ひでぇっすよ、秀馬さん。俺言いましたよね? 何としても一子ちゃんだけは譲れないって」
真剣な歩の表情を見て、秀馬はごくりと唾を飲み込むしかなかった。
ーーー本当に明日のイブを彼女と約束してるとでも言うつもりか?
「映画、誘ったんすよ。レイトショー。秀馬さんは?」
「俺は……」
ーーーイブは、空けといてくれと伝えただけで、まだ具体的な待ち合わせや時間、行く場所も伝えていない。
つまり、俺は約束している訳じゃない。
「……秀馬さんは約束してない……と。ですよねー、一子ちゃんは俺と約束してんすから」
歩は、手にしていたキーケースを上に高く放り投げて、手に取る。また、放り投げて手に取った。
「映画の後は、やっぱ夜景見て2人でゆっくり出来る場所で〜ケーキでも食べて……楽しみだな〜……」
歩は、秀馬を横目で見て楽しそうに笑った。
「じゃ秀馬さん、明日のために俺、家ん中掃除しないと! お疲れさまでーす」
歩の言動は、わざとらしいくらいに見えなくもなかった。だが、気になる。