《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
立ち上がらせた村山父の目をまっすぐに見る。
「遊びじゃないですから。俺、一子さんでないとダメなんです。ホントに……本気ですから」
「それ信じていいのか?」
村山父の眉尻がさがり、秀馬を見上げていた。
村山父は親バカかも知れないが、娘をひたすら愛し心配している父親のあったかい姿が見える気がした。
ーーー親父もあったかい人だった。お人好しくらいに優しくて。根っからの仕事人で俺を守ろうと必死な人だった。
死んだ親父を思うと、未だに泣けてくる。鼻がツンとして、同時に情けなくもなる。
秀馬は、気をとりなおして村山父の手を握った。
「ホントです。改めて一子さんとの交際を許していただきたいので、今度ご挨拶に伺わせて下さい」
秀馬は、深く頭を下げた。
顔を上げてみると、強面だったはずの村山父の顔が緩んで目だけがやけに大きく感じた。隣に立つ一子は、瞳を潤ませて秀馬を見ていた。
「真田さん……」
並んで立つ父と娘を見て、なんだか心がほっこりしたし、自然と笑みがこぼれた。
ーーーやっぱり、親子だ。ロバによく似てる。
騒ぎに集まってきたスタッフのホッとした笑顔。店の中にあったかい雰囲気が、クリスマスソングと共に流れていく。
心配そうな顔した村山父が、秀馬に耳打ちしてきた。
「三津子に聞いたが、カリスマにカットしてもらうと高いんだってな? いくらだい?」
苦笑いして秀馬は、一子を見た。きょとんとする一子。
ーーーいいな。やっぱり、親子だ。