《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
村山父が帰ってからは、店は目の回るような忙しさだった。
客もスタッフもイブのせいか、みんなどことなく浮き足だっていた。
ーーーいや、自分が一番気を引きしめないと。
秀馬は村山父が一子と帰る前に店の外に出て、決死の覚悟で一子に今夜デートする約束を取り付けたのだ。
もちろん「きちんと帰りは送りますので」と村山父にも約束してのことだ。
せっかく好きな人が出来て、朝まで一緒に過ごせるチャンスだった。
ここは35のオッサンなんだから、朝までいるのが当然みたいなノリでいたい所でもあった。
だが、成り行き上、思っていたより早く一子の家族と知り合ってしまった手前、オッサンらしい軽率な行動はできなくなってしまったというのが今の現状だ。
ーーーでも、いい。会えないよりは、余程いい。
秀馬は、客の髪にブラシを入れながら、いつもよりテンション高く客に話しかけている自分に驚いていた。
ーーー俺って、結構単純な人間だったんだな。
自分を客観的に見ると、多少笑えた。
でも、それでいい。そんな風に思えた。