《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
それから、歩は頭を下げて
「秀馬さん! 俺、川崎支店でも頑張ります。だから、店長、俺にやらせて下さい」秀馬に頼んできた。
「原宿支店じゃないと嫌なんだろ?」
「俺、勘違いしてたんっすよね。ネームバリューがどうとか、新しい方がいいとかって」
顔を上げて、いつになく歩は真剣な顔を見せた。
「まだまだ、下っぱのくせに一人前に考え方甘いって、わかりましたから。秀馬さんは、まだまだ俺のはるか上いってる男っすよ。その秀馬さんが言うことなら、間違いねーよなぁって」
「歩、いいのか?」
「いいも何も…お願いします! これからも俺、秀馬さんについていきたいんで、いつか秀馬さんの片腕になれるように、どこへ行っても頑張ります」
ーーー片腕か。歩は、初めから可愛い後輩で面倒みてきた。いつでも、俺の近くにいたから、俺の持ってるノウハウも技も歩には十分に伝えてきた。
だから、歩が言う通り、俺から巣立ち、いずれは片腕になってくれるかもしれない。そして、俺と肩を並べる日も、そう遠くない未来にあると思える。
「歩、頼んだからな。あとは、お前次第だ。マッツンの後任は、難易度が高いぞ」
川崎支店は、店長の耕三が持ち前の温和な性格と技術で客を集めてきた。あの人当たりの柔らかさは、真似しようとしてできるものでは無い。
ーーーたぶん、麻耶も耕三の温和で優しいところが好きなんだろう。
「耕三さんは、どっか行くんすか?」
「ああ、少し遠くの支店にな」
秀馬は、今はテロのデモ行進やらの話でやたらと報道されているフランスを思い出していた。