《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★


歩と別れ、秀馬は駅前の大きな時計近くに来ていた。

ーーーあ、いた!


陶器製の椅子に座って、体を傾けている女性。


ーーーあの日と同じだな……。

一子を見ると、いつでも思わず笑ってしまう。

ーーー面白い女だ。


近づいて肩を揺らすと、驚いたように跳ね起きた。ロバが驚いたように大きな瞳が秀馬を見上げ、ゆっくり垂れ下がる。

「真田さん」

にっこりと微笑んだ一子を、秀馬を軽くハグした。

「会いたかった」


「え……あの私も」

ーーー可愛いことを言ってくれるなぁ。


「行こう、今日は歩がデートコースを考えてくれたんだ」

「歩さんが?」

一子を立ち上がらせて、手をとり歩きだす。

「ん、一子と俺のために練りに練ってくれたデートコース。まず、クリスマスディナーで、それから映画」

チケットを出して見せると、驚いた表情の一子。

「あ、それ。歩さんから私がもらったチケットと同じのですね?」

「そうだよ。歩がくれたってこと。一子と二人で行って来いって」

「……はあ」

なんだか心許ない一子の返事に調子が狂う秀馬。

「なあ、気がついてる?」
立ち止まり、一子をじっと見つめる秀馬。
< 293 / 342 >

この作品をシェア

pagetop