《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
歩と別れ、秀馬は駅前の大きな時計近くに来ていた。
ーーーあ、いた!
陶器製の椅子に座って、体を傾けている女性。
ーーーあの日と同じだな……。
一子を見ると、いつでも思わず笑ってしまう。
ーーー面白い女だ。
近づいて肩を揺らすと、驚いたように跳ね起きた。ロバが驚いたように大きな瞳が秀馬を見上げ、ゆっくり垂れ下がる。
「真田さん」
にっこりと微笑んだ一子を、秀馬を軽くハグした。
「会いたかった」
「え……あの私も」
ーーー可愛いことを言ってくれるなぁ。
「行こう、今日は歩がデートコースを考えてくれたんだ」
「歩さんが?」
一子を立ち上がらせて、手をとり歩きだす。
「ん、一子と俺のために練りに練ってくれたデートコース。まず、クリスマスディナーで、それから映画」
チケットを出して見せると、驚いた表情の一子。
「あ、それ。歩さんから私がもらったチケットと同じのですね?」
「そうだよ。歩がくれたってこと。一子と二人で行って来いって」
「……はあ」
なんだか心許ない一子の返事に調子が狂う秀馬。
「なあ、気がついてる?」
立ち止まり、一子をじっと見つめる秀馬。