《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「なら……」一子の片方の手を持ち、自分の背中へと導く秀馬。
「嫌じゃないなら、手くらい…まわせよ」
「あ、なるほど」
おずおずと秀馬の背中に手をまわす。より体が密着して恥ずかしい。
ドキドキする胸の音が、きっと聞こえているだろう。
ーーー真田さんに抱きしめられてるんだ。これ、夢みたい。
ぎゅっと、秀馬のコートを掴んでみる。
確かにある。存在しているようだ。
「真田さん……」
「ん?」
「夢みたいです」
抱きしめる手を緩めて、腕の中にいる一子を見つめる秀馬。
「そうか? なら、夢じゃなくしてやる」
歩道の落葉樹の下で、抱きしめられてキスをしていた。
ーーー私、今、キスしている。私、今、恋している。真田さんが好き。
髪を切ってもらった時には、もう好きだった。人生で初めて気にいった髪型にしてくれた真田さん。
その気にいった髪に触れる細くて長い指先。
「初めて触った時も思ったけど、髪柔らかいな」
「そうですか? それっていいことですか?」
「いいに決まってる。俺は柔らかい髪が好き」
言いながら、一子の髪に鼻を埋める秀馬。
寄り添うようにして歩く街は、キラキラしてて夢の中みたい。
ーーー夢なら覚めないで。夢なら、ずっと眠っていたい。
握っている秀馬の手。自分と違って骨ばった手。