《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★

「似合うよ。かわいい」
整った顔で極上の笑顔を見せられたら一子は、のぼせあがるしかない。

たくさんの幸せを感じて一子は、ひたすらぼーとしていた。

ーーー私ばっかり喜んでる。置き物は、割れちゃうし……。


「ごめんなさい。本当に。この置き物シリーズは真田さんが初めて店にきてくれた時の思い出だから……なのに割るなんて」

「大丈夫だよ」

何が大丈夫なんだかわからないが、秀馬が慰めたい気持ちは一子に伝わってきていた。

「そう言えば、真田さん」

「初めて店に来たとき、アンティークのブローチを真剣に見てましたけど……どうして?」

途端に表情を曇らせる秀馬。

「ああ……昔、俺の母親がつけてた奴に良く似てたから」

「真田さんのお母さん……美人でしょうね〜」
一子の問いかけに、秀馬は首を振る。

「………さあ、思い出したくない。……それより映画の時間に遅れるぞ。急ごう」
話題を変える事で秀馬は、気分を変えたいように見えた。


ーーー真田さんは、お母さんと何かあったのだろう。思い出したくないくらいの出来事が。それなら、思い出させないようにしなくちゃ。

身支度を慌てて整え一子は、秀馬に手をひかれ店を出た。





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