《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
においというのか、キッチンで秀馬が年越しソバを茹で始めた頃に
「真田さん……ごめんなさい。寝てましたね〜私」と一子が起き出してきた。
「いや、丁度いいタイミングだ。年越しに間にあった」
テレビで放送される除夜の鐘を聞きながら年越しソバをずずっとすすった。
「何年ぶりだろー。人の作ってくれた年越しソバ食べるのは……」
寝起きでも食欲のある一子。あっと言う間にソバを平らげた。
年越しソバは、お替わりするものかどうかわからないが、また茹でてやり、もりもり食べる一子を微笑んでみていた。
ーーー可愛いな。一子は。こんな小さい体のどこにソバが収まったんだ?
アナウンサーがカメラ目線で
「あけましておめでとうございます」と言ってきた。
「おめでとう! 秀馬さん」
「おめでとうって……え、今なんて?」
ーーー初めてだな。秀馬って呼んでくれたのは。
「おめでとう、秀馬さん」
ソバを食べ終えた一子が満足そうに腹をさすりながら微笑んだ。
ーーーまるで、妊婦だな。
「すごく……面白いな。一子って」
一子といると、なんか面白い。楽しくなれる。
ーーー俺は、こんな人を待ってた。一緒にいて、和める人。笑える人。そして、心から愛せる人を。
「一子、おいで」
両手を伸ばすと飛びついてくる小動物みたいな一子。
ソファの上でとろけるようなキスをした。
年が明けて、初めてのキスをした。
溢れるような想いを、伝えきれない愛しさを胸に抱えて、出来るだけ優しく一子を抱きしめて深いキスをする。
ベッドに行き、一子の小さい体にかぶさる秀馬。
「愛してる……」
ーーー俺は、きみに出会えたことが嬉しいんだ。
一子の髪を指ですく。唇を合わせると少し緊張した。
ーーーきみの大きな瞳に俺だけが映っているこの瞬間を大事にしたい。
互いの瞳に互いの姿だけを映して、服を脱がしあい、たくさんのキスを互いの体に落としていく。少しのすき間もないくらいに体のすべてを愛した。
絡み合う2人の体。
一子と秀馬は、年明け早々に一緒にいる喜びを存分に分かち合う。
たまに一子が体をよじり、くすぐったいと笑った。
ーーーくすぐったがる顔も、恥ずかしがる顔も、俺を感じる顔も……。特別な顔は俺だけに見せて、一子。
一子が「お腹は、あまり見ないこと、あと押さないで」と小さな声で言ってきた。
少しだけ、でっぱってしまった一子のお腹。妊婦になったら、こんな感じなのかと不思議な気分になった。
2人の愛を存分に交わしあった後に、人差し指で胃あたりから出っ張りの頂点である臍までをなぞってみた。
「秀馬さんっ!」
ペシッと叩かれた手の甲。
「いてっ! なんで」
「見ないでって言ったじゃない」
布団を頭から被ってしまう一子。
「見てないし、押してない。触っただけだろ」
「触るのもダメ」
「じゃあ、代わりにどこならいいんだ?」
こちょこちょとくすぐると、一子は体をよじって「ハハハッ!」と笑った。