《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
軽く触れただけなのに、一子の瞼がゆっくりと開いた。
「……おはよう……秀馬さん」
長い睫毛が、ぱちぱちと動いた。
「おはよう。よく眠れたか?」
両手を上げて伸びをする一子。
「うん。今何時?」
「あー、1時26分」
「やだ! 寝すぎじゃない! 大変、早く初詣行かなきゃ!」
ベッドの上で猛烈に飛び跳ねて慌てる一子。
「一子、慌てるな。落ち着いてくれ。神社は逃げないから」
「うん。そうだけど……」
ベッドに腰掛けた秀馬は、不服そうに唇を尖らせる一子を引き寄せ抱きしめる。
「初詣に行かなくても、今年がいい年になる事は、もう既に目に見えてるけどな」
「そお?」
「当たり前だろ。年明けに大好きな女の子を抱けたし~」
秀馬は、耳まで真っ赤な一子を背中からぎゅっと抱きしめる。
「こうして、一子が俺のそばにいるだけで相当縁起がいいんだから」
「そうかなあ」
「そうなんだよ。さ、顔洗っておいで。雑煮作って食べよう」
「わあ、お餅大好き」
凄く喜んでいる一子を見てると、なんだか餅にまで妬けてくる。
―――大好き! なんて俺も言われたいもんだな。
秀馬は、抱きしめた一子の耳元で「俺と餅とどっちが大好き?」と馬鹿馬鹿しいことを聞いてみる。
「えっと~」
唸りだす一子。
―――考えてるよ。全く敵わないよなあ。
「考えるな。即答しろよ。俺に決まってるだろ?」
「あ、そうだよね。うん。そうに決まってるかも」
年が変わっても相変わらずに天然な一子は健在だった。
―――でも、そんなところも可愛い。
また一子をぎゅっと抱きしめる秀馬は、無邪気な眠り姫に骨抜きにされたカリスマ王子だった。