《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
叔母が母から離れ喫茶室を出て行った秀馬の後を追って来た。
「秀馬くん、驚いたでしょう? ごめんね」
「……いつから……痴呆症に?」
「一年くらい前からかしらね」
叔母は、黙り込む秀馬の側に立って窓の外に見える海を眺めた。
しばらく、ふたりして黙って寄せては返す波を見つめ続けていた。
「黙っていてごめんね」
叔母が何を黙っていたと謝るのかもわからないでいた。
一子の勧めで、元旦に叔母へ電話をした。
ーーー毎年ありがとう。俺の誕生日を祝ってくれるのは叔母さんだけだと。感謝してますと伝えるだけのつもりだった。
なのに、連絡したせいで憎んでいた母が叔母の近くで生きていると知ってしまった。
優しかった父は、好きな理髪師も辞めて病気で苦しんで死んだのに。
元気で生きていると叔母に聞き、当然文句を言うつもりで来た。
それなのに……。
何十年かぶりに再会した母は、ボケていたのだ。自分のしでかしたことを忘れ、男を作る前の自分を家族を覚えていた。
ーーーこんなことってあるかよ……。
憎しみが、行き場を失っていた。
「秀馬くん、驚いたでしょう? ごめんね」
「……いつから……痴呆症に?」
「一年くらい前からかしらね」
叔母は、黙り込む秀馬の側に立って窓の外に見える海を眺めた。
しばらく、ふたりして黙って寄せては返す波を見つめ続けていた。
「黙っていてごめんね」
叔母が何を黙っていたと謝るのかもわからないでいた。
一子の勧めで、元旦に叔母へ電話をした。
ーーー毎年ありがとう。俺の誕生日を祝ってくれるのは叔母さんだけだと。感謝してますと伝えるだけのつもりだった。
なのに、連絡したせいで憎んでいた母が叔母の近くで生きていると知ってしまった。
優しかった父は、好きな理髪師も辞めて病気で苦しんで死んだのに。
元気で生きていると叔母に聞き、当然文句を言うつもりで来た。
それなのに……。
何十年かぶりに再会した母は、ボケていたのだ。自分のしでかしたことを忘れ、男を作る前の自分を家族を覚えていた。
ーーーこんなことってあるかよ……。
憎しみが、行き場を失っていた。