《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
仕事終わりに、仁美と食事をしに有名なシェフのいるフレンチレストランに来ていた。
「ここのお店、素敵でしょ?」
「そうだね。仁美さんはセンスがいいから」
ゆったり流れるピアノの生演奏。間接照明が壁面に当たり、大人っぽい落ち着いた雰囲気のある店内。
ーーー何故だ。長峰仁美とディナーなんか食べるつもりは無かったのに。
秀馬は、歩の粋な? 計らいで長峰仁美のご機嫌をとるような感じになっていた。
笑顔を浮かべていながら内心では疑問符ばかり浮かんでしまう秀馬は、静かにフォークでフォアグラを刺して口へ運ぶ。
ーーーまずい。フォアグラの美味さは俺にはさっぱりわからない。こってりしていて無駄に脂っぽい。
世界三大珍味の訳だ。まさに珍味。
ガチョウの肝臓なんか、わざわざ食べたくもない。
うんざりして秀馬は、白ワインをガフガブ飲んだ。
そして、自分の目の前に座りフォアグラを口へ運ぶ仁美のテラテラと光るぽってりとした唇を眺めた。
ーーー20代なら、脂身もこってりも好んで食した。だが、35ともなると……。
秀馬は、なんだか胃がムカムカするような気分になり、顔をしかめる。
「秀馬さん、この後うちに来ない?」
「え?」
口を半開きにした秀馬は、驚いたような表情で仁美を見た。