《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「朝の挨拶、忘れてただろ」
「うん」
「さ、遅れる。急げ」
玄関を出て鍵をしめる。首を伸ばして外を眺めると土手沿いの道に7分咲きの桜並木が見えていた。
ーーー今度の休みは、花見にでも行くか。
腕時計を見て、早足になる秀馬。一子の手を握ってマンションの廊下を歩く。
「毎日、競歩みたいね。私達」
笑い出す一子を眉間にしわを寄せ振り返る秀馬。
「お前のせいだろ? それにお前と競歩で競争する気はないからな」
「どうして? 私、走るのは早いのに」
唇を尖らせる一子。
ニヤリと口角を上げる秀馬。
「競歩は走ったら反則だからな」
一子の手を離し早足になる秀馬。
「ダメ! 先にスタートしちゃうのって反則!」
早足で秀馬に続く一子。
マンションの廊下を勢いよく尻を振りながら本気で競争するカップルは、周りからみたらきっと滑稽で……
完全に
やらかしちまっている……
だろうな。
………そう思った。
+;・ο。.・;;+*★ fin ★ +;・ο。.・;