《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「あれ、仁美?!」
テーブルの横を通りかかった男が、驚いた声を出した。
「? 」
見上げた仁美は、途端に青い顔を見せる。
「仁美、誰? こいつ」
「え、あ、うんと……」明らかに狼狽えている仁美。
仁美をフォローするように
「美容師です。仁美さんと仕事関係での話をしてました」ニッコリ微笑む秀馬。
「へぇ、仕事。フォアグラ食べながら二人きりで? 」
テーブルに並ぶ皿を見る男。
「そ、そうよ」
「ふ〜ん。別にいいよ。仁美がそういう気なら」
「和也。誤解だって!」
仁美が男の手を掴んだ。
立ち上がろうとする仁美を制して秀馬が立ち上がる。
「僕は先に失礼するので、あとは2人でゆっくり話をしてください」
バツ悪そうな顔みせた仁美を残して、秀馬は店を出る。
ーーー意外な所で助かったな。しかし、真面目に返事をして損をした。
男がいるくせに家に誘う女ってのは…一体? 俺は、もしかしたら遊ばれる感じだったのか?
まあ、いずれにしても胃にもたれる話だ。
胃の辺りをさすりながら、一気にゲンナリした秀馬は、大通りを目指して歩いていった。