《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「「おはようございます」」
開店準備におわれていたスタッフが入ってきた秀馬に笑顔で挨拶してくる。
「おはようございます」
挨拶を返す秀馬に鏡を磨いていた歩が、待ってましたとばかりに飛んできた。
「秀馬さん! 聞きたいですか?」
「聞きたくない」
バックルームにまで着いてくる歩。
「え〜、マジっすかぁ? あれ、秀馬さんコートの裾汚れてますよ」
「知ってる」
コートをハンガーにかけて、裾の汚れを手ではたく秀馬。
「昨日、彼女に会いに行ったじゃないっすか、俺」
「タッパーを返しに行ったんじゃないのか?」
「それもありますけど、それはもちろん口実ですよ〜。聞いちゃいます? 話の続き」
「だから、聞かない」
「え〜聞いて下さいよ〜。彼女、タッパー届けてくれたお礼にってコーヒー出してくれたんっすよ。優しいっすよねー」
秀馬は、鼻で笑ってみせた。
「どうせ、缶コーヒーだろ?」
「いえ、コーヒーメーカーの奴ですよ。客に缶コーヒーなんて普通ないでしょう」
何気ない歩の言葉に眉毛をピクピクさせる秀馬。
力強くコートをパンパンはたきながら、首を左右に倒して関節を鳴らした。