《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「彼女、一子ちゃんって言うんですよ。可愛いですよね?」
ーーー可愛いか? 歩の感性がわからない。
「兄弟が多いらしくて、彼女が一番初めの子供だから一子」
ーーー最初の子供だから、一子って……安易すぎるだろ。いいのか? 名付けるのがそんな適当で。
コートのポケットに入れっぱなしだった犬の置き物を出して、秀馬はとりあえず小型冷蔵庫の上に置いた。
「で、一子ちゃんと今度の週末にデートする約束しちゃいましたぁ!」
観葉植物の葉っぱをよけて水をあげていた秀馬の手が一瞬だけ止まる。
「デート……あのざんぎりと」
秀馬は、嬉しそうな歩を見て首を傾げた。
「なんか嬉しそうだな?」
「そりゃそうでしょ〜。デートですからね〜」
「ふん。せいぜい頑張れ」
「もちろんです! このまま突き進みまっす!」
やる気マンマンな歩。
ーーーあのざんぎりとデートがそんなに嬉しいのか? わからない。他にも女ならいるだろうに。
バックルームのドアがノックされて、スタッフの女の子が顔を出した。
「朝礼お願いしまーす」
「はい、今行きます」
秀馬は、今から何を想像してデレデレしてるのかわからないが歩の表情に驚いていた。
ーーー昨日、今日会ったばかりの女だぞ。そんなすぐに本気になれるものか? 俺には、全くわからない。
秀馬は、なんとなく腑に落ちないままでバックルームを出た。