《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
「なんでもない。今朝のこと?」
秀馬は今朝のことを思い出して、今更だが右肩をささっと手ではらった。
「私、迷惑かけたんですよね?」
「いや、寝てるあんたの足がスカートを履いてるのに開きかけていたからコートをかけて、居眠りしてぐらつくあんたの頭を俺の肩に乗せただけだから」
「やっぱり! 私、それなのに仕事に遅れそうだったからって、お礼も言わずに……すみませんでした!」
ぺこぺこと謝罪する一子。
「もう、いい。勝手なお世話を俺がしただけだからな」
「でも、親切にして頂いたのに……私ってば」
瞳を潤ませる一子を、秀馬は首を傾けて眺めた。
「あのざんぎりが、本当……」
「?」
「良くなったな、髪。髪でだいぶ印象が変わるよな。人って」
いいながら、秀馬の手が一子の顔の左横、髪に向かって伸びてくる。
一子の耳にかすかに触れる秀馬の掌。
秀馬の指先が一子のサイドの髪をそっと軽くとかすように動いていった。