《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★
『うん。ほら、俺、いつも秀馬さんに面倒見てもらってるから力になりたいんだよね~。本気っぽいし』



一子は、少しだけ胸がうずくのを感じていた。
―――真田さんに本気で好きな人がいたって不思議じゃない。むしろ、普通いるだろうし。真田さんとなら、きっと誘われた女性はどんなデートでも喜ぶに違いない。



『……いいですよ。あの、私も真田さんの力になりたいですし』

―――真田さんには、カリスマなのに安い料金で素敵な髪型にしてくれた恩返しがしたい。



『よかったあー。男の俺の意見だけじゃ心配だからさ、女の子の意見も聞きたいしね。助かるよ。じゃあ、今度の土曜日空けといてね』
歩が楽しげに笑った。



―――歩さんは、真田さんのこと本当に慕っているんだなー。こんなに真剣に考えてもらえて真田さんは幸せものだなあ。




一子は、喜んでいる歩を見て感心していた。
―――人のことなのに、ここまでマジメに考えているなんてスゴイな。



小声になった歩が人差し指を立て唇にあてながら
『あと、これ秀馬さんには内緒ね。秀馬さんが知ったら、きっとそこまでしなくていいって気を使わせちゃうと思うから』と言った。


一子は、歩の言葉に頷いて涙さえ浮かべそうになるほど、感激していた。
―――歩さんは、偉いな。頑張ってもそれを口に出さないで黙って努力を惜しまない人なんだ。私もこんなに人の為に頑張る歩さんを応援したい。






そんなふうにあの日、歩に頼まれ、秀馬の役に立つならって一子は下見に付き合うことにしたのだった。
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