続*時を止めるキスを —Love is...—
龍が帰ってくるのは私の退社時間より遅いみたいだし、さっさとこの案件をサラーッと処理しますか。
そして翌日。とうとう、無神経な二股男との決戦を夜に控えて出社した私。
隙のない黒のパンツスーツを選び、ミディアムロングの長さの髪をアイロンでまっすぐに伸ばして下ろした。
顔に施した化粧だって、アイラインのはね具合も違うし、選んだリップまで少し赤めの色合いだ。
「……どしたの?気合い入れてるね」
そんな私と更衣室で鉢合わせた、先輩の柚さんが今日も綺麗な顔を崩しながら聞いてくる。
「実は今夜、うっとうしいのと会わなきゃいけなくて」
「ん?ああ、ドラゴンね。今日帰ってくるしねー」
そう切り返し、けたけた笑い始めた彼女。その答えだと、さすがに彼氏さんが不憫なので訂正する。
「違いますよ。元彼です」
「は?例のクズ!?なんで!?」
彼女は表情をがらりと変え、顔を歪ませながら口にした。……やっぱり彼女は、正直者で痛快だ。
もちろん同意見の私はにっこり笑って頷くと、深い溜め息混じりで話を続ける。
「そうなんですよ。“渡しそびれたものがある”って、しつこくて根負けです。
ほんと今さら何なんでしょうね?……で、そんな苛立ちと気合いを服と顔に込めてみました」