続*時を止めるキスを —Love is...—
最後は、あはは〜と呑気に笑っていたら、悲壮な顔つきに変わった柚さんに両肩を掴まれる。
「いやいやいや!危ないって!!——それ、あいつ知ってんの!?」
ブンブン、揺すられながら尋ねられる。“あいつ”とは彼女と同期でもある、龍のことだ。
「いえ?出張中なのにそんな些細なこと言いませんよ。
そもそもですよ?教えたって国単位で離れてるのに、余計な心配をさせるだけじゃないですか?」
こともなげに言う私に脱力したらしい彼女は、今度は大きな溜め息をついていた……。
そして始業後は専務と共に取引先へ向かった柚さん不在のまま、滞りなく時間も過ぎていた。
昼前にチーフから電話が入っている、と後輩に言われた私。手元の受話器を取ると外線ボタンを押して、「はい、浅川で」と応対するが。
「——なにやってんだ!」
ラストの“す”のひと文字を言う前に、電話口から恐ろしい一声が聞こえてきた。
不在中にわざわざ電話を貰うほどの粗相をした覚えはない。……多分、いや言いきれる。
理由を尋ねても火に油を注ぐのは分かりきっているから、と首を傾げて黙りこくる私はずるい。
すると、電話向こうのチーフこと龍がこちらに聞かせるように、わざとひとつ息を落とした。
「……藍凪、電話を切って1分後に携帯に連絡入れる。——さっさとひとりになれ」