続*時を止めるキスを —Love is...—
就業中に名前で呼ばれ、思わず目を見張る。でも、私はそれを隠すように俯き加減で口を開く。
「すみません、しつ」
“失礼します”とも言わせて貰えず、せせこましい態度のチーフの通話は途切れてしまう。
“賢いのは充分知ってますけど、人の話を聞かないのはそちらも一緒ですよ?”といつか言おうと思いながら……。
ともあれ、こうしてはいられない。スマホが内ポケットに入っているのを念のため確認する。
そして先輩に向け、「ちょっと資料室に行ってきます」と言付けをして席を立つことにした。
ひとりきりになれる場所を頭の中で考えたところ、滅多に使うことのない資料室が妥当と思ったのだ。
秘書課を出た私は廊下を走り、静寂に包まれたその部屋の中へ入る。バタン、と急いでドアを閉めるとスマホを探って手に持つ。
その直後、規則的な振動とともに画面には“龍”の名前が表示されたのでスライドして通話に切り替える。
「な、なに!?」と、出した声は疾走のせいか少しだけ息が弾んでいた。
「お前、何で昨日言わなかった?」
「主語が抜けて」
「“報連相”の出来ねえヤツが言うな」
ここでも上司然とした彼に言葉を被せられ、恨めしく思いながら押し黙る私。
「——元彼と会うって何のため?」