続*時を止めるキスを —Love is...—


「すみません。自己紹介がまだでしたよね。
初めまして。私、……あき、いえ。龍の妹で、央華(おうか)と申します」

「……え?いもうと、さん?」

「はい。ようやくお会い出来て嬉しいです」

ついに彼女の正体が判明したものの、そのまま固まってしまう私。——龍の妹さんがなぜここに……!

どうにか目の前のアイスカフェオレをひと口飲んで少し正気を取り戻すと、おずおずと口を開いた。


「ええ、と、妹さんは確か、高校生のモデルさんだと」

「あ、私のことは、どうぞ央華と気軽に呼んで下さい」

「じゃあ、央華ちゃんと呼ばせて下さい。あ、私も気にせず名前でどうぞ?」

「では、お言葉に甘えて、藍凪さんと呼ばせて貰いますね。
お仕事のこと、兄が言ってましたか?アルバイト程度にさせて頂いてます」

“本職の足元にも及びませんよ”と加えて、くすくす笑っている彼女。


彼女がモデルを務めているのは、年齢層のかけ離れたティーン雑誌とのことで。

とっくの昔にその世代の雑誌コーナーを通過するようになった私は、残念ながら彼女の活躍する紙面を見たことがない。

こんなことなら、龍にちゃんと教えて貰うべきだった……!——まあ、龍のほうも“そのうち会わせる”ってやけにテキトーでしたがね。

それにしても、モデルという華やかな業界で仕事をしているにもかかわらず、何というか偉ぶっていなくて人なつこい。

無愛想で上司部下に恐れられている“お兄さん”とは、正反対なのでその点にもびっくりだ。


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