続*時を止めるキスを —Love is...—
夜の静けさって、こんなに寂しさを募らせるのは何故だろう?チクリチクリ、と胸に痛みを覚えてしまう。
すると、コツコツと革靴音が聞こえた。
顔を上げた私が出入り口へ視線を向けたところ、予想どおりの人物と対峙する。
「お疲れ様です」と、無表情のまま刺々しい口調を出すと、こちらに歩み寄ってくる。
その人物こと、龍はガーゼの貼ってある私の片頬に目を向けながら、静かに口を開いた。
「——巻き込んでごめん。痛かっただろ」
苦悶に満ちた表情を浮かべて、珍しく素直に謝罪されたからだろうか。ふつふつ、と頭の中で何かが沸き立っていた。
「当たり前よ。……何なの、あれ!?
央華ちゃんが教えてくれていなかったら、私とっさに対応なんか出来なかったわよ!」
見上げながら睨みつける私の怒り声は、閑散とした夜のオフィスに虚しく消えていった。
あの令嬢にだって毅然とした態度が出来たのも、央華ちゃんが直前に教えてくれていたからで。
よほど器用な人じゃない限り、瞬時に判断なんか出来ないし、攻撃方法だって見出せない。
もちろん私は、そういったタイプだ。彼女の通達がなければ、殴られ損になっていただろう。