続*時を止めるキスを —Love is...—
いつもだったら私をからかうように言い返してくるのに、今日は黙って怒りを受け止めている彼。
おかげで調子を狂わされた怒りの炎には自動消火装置が作動し、それ以上は責め立てられない。
「央華のお陰、と言ってやりたいけどな。
実はあの女が央華を尾行してたせいで、藍凪の顔が割れたんだ」
「はあ?央華ちゃんは悪くないし。
そもそも、何も言わない彼氏に問題があると思うけど?……私の時は散々、責めてきたくせにっ!」
かの無神経男との一件を忘れたとは言わせないぞ?と、ジロリと睨みつける。すると、バツが悪そうに苦笑を浮かべた彼。
「あー、さっさと片づく問題だと思ってたから、敢えて言わなかったんだよ。悪かった。
そもそも見合いする気もないって!——あんな女と時間を過ごすのはあり得ねえ。央華だってそう言っただろ?
まあ、ちょっとゴタついたのが聖吾を通じて央華にバレたのはマズかったな。……怪我までさせて本当にごめん。
諸悪の根源の親父は、今ごろお袋にこってり搾られてるだろうな。当然だ」
髪を搔き上げる彼の姿に、「……思いきり、人ごとじゃない?」とツッコミも入れたくなる。
すると目の前に立った彼が私の背中に手を回し、そのまま抱き寄せた。ふわり、彼の香りが鼻腔を掠めていく。
「ハッ、そもそも藍凪がいるのを知りながら、今さら結婚を急かすほうがおかしいんだっての。
ったく、昔から人を見る目がないんだよ。それが災いして央華にも嫌がられるってことにも気づかねえし。
たぬき親父に制裁を下すのはお袋の役目だけどな。——ま、使えるもんは何でも使うが勝ちだ」