続*時を止めるキスを —Love is...—
「……怖いよ、その発言」
胸に手を置いて、彼の腕の中から顔を上げると、メガネの奥の真っ黒な瞳と目が合う。
「ちなみに、藍凪の大事な顔を負傷させた人間には、“あれこれ”制裁を下すように指示も出したけど?」
ニヤリ、と口角を上げて笑った龍。……口の悪さと腹黒具合は兄妹の共通点ですね、やっぱり。
沸騰しきった脳内が冷めたせいか、それとも諦めなのか、疲れからなのか。私は再び彼の胸へと身を預けることにした。
「近いうちにここに留まってるわけにもいかなくなる」
「……坊ちゃんも大変ね」
「アホ。ぼっちゃんじゃねえよ」
「うん、こんな口と性格の悪い坊ちゃんはいないよね」
あの豪華なマンションからも分かるとおり、龍は並のセレブではない。
さっきから酷評されている彼のお父様は、実は政財界にも名の知られた人物である。
くすくす笑っていると、頭を撫でられる。ふぅ、とひと息ついた彼がそのままの状態で話し始めた。
「これまで名前を隠して働いて、色々と経験を積ませて貰えた。ここだから見えたこともたくさんあった。
今まではここを拠点に動き回れたけど、今後はそれじゃ済まされないプロジェクトがすでに始動している。
まずは近いうちにシンガポールに発つが、その後は本社で正式に役員に就任することも内定した。……悪いな」
「……そ、っか」