続*時を止めるキスを —Love is...—
この会社だって龍のお父様が代表を務める、グループ企業の傘下に過ぎない。
彼がここで働いていたのは、現社長である叔父さんの仕事ぶりを学ぶためだったという。
また秘書課に在籍していたのは、重役たちを理由に使って、あれこれと動き回ることが出来るからで。彼の正体を知るのは、社内でも数えるほどだとか。
まあ、当社ではグループ企業の頂点に立つ御曹司の顔を知る機会はないだろう。
そして話のとおり、彼の名字は滝野ではない。それも彼の母親ではなく、当社の社長の奥様の旧姓を用いている。
こうして何十にも重ねてかけた鍵が、龍の大きな秘密を守って来た。——そんな事実を、私は付き合い始めてすぐに教えられていた。
その頃から遠い世界の人だと覚悟して付き合っていた。
だけど、……いつかがこんなにも早く訪れた。その事実に、目の前が暗くなっていく。
上司としてもよく知る彼は、邪魔になったからとあっさり私を捨てるような人じゃないと、頭では分かっている。
それでも、元いた環境へ舞い戻って行った時、もう同じ目線では物事を見られなくなる。……そんなの、私のほうが耐えられない。