続*時を止めるキスを —Love is...—
出来ることなら、このままいたい。好きだから離れたくない、でも……。
目の前の胸に両手を置き、グッと強く押しながら、「あ、の」と口を開いたその瞬間。
「だから、浅川藍凪さん。
……俺と結婚して一緒にシンガポールへついて来てくれませんか?」
「へ?」
間抜け顔の私に微笑を浮かべた龍が、「結婚しよう」とまた告げてくる。
「……なんで、ここ?」
「——ここが俺らの始まりだから」
「なるほど」
端的なそのひと言は、私からすべての迷いと混乱を払拭してしまう。
本当に龍はずるい。——これでもう、別れてとは二度と言えなくなってしまったのに。
少し離れて貰うようにお願いすると、すぐに聞き入れてくれた彼。
手を伸ばせばすぐに届く距離感で、ジッと艶のある黒い瞳を見つめ、私はおずおずと口を開いた。
「——うん、じゃなくて。
……はい、よろしくお願いします」
こんな大事な場面でさえ、決められない私だけど。こんな私を欲してくれる人がいる。それを手放す理由はどこにもない。
小さく頭を下げ終えた瞬間、再び捕われてしまう。同時に、「よろしく」と低い声が鼓膜を揺らす。