続*時を止めるキスを —Love is...—
すると龍はおもむろにスーツの内ポケットを探って、何かを手のひらに乗せて見せてくる。
その小箱はビロードの小さな箱で。目を見張る私を一笑し、その箱を開けて中の物を取り出した。
「君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひぬるかな」
つらつら、と低い声色で詠み上げられた一句。
その間に私の左手の薬指には、キラキラと眩しい輝きを持つ指輪が填められていた。
涙腺が緩んでしまった私の瞳には、じわじわと涙が溜まって頬を伝い落ちていく。
「……みっ、陸奥(みちのく)の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくにっ、」
それでも、震えた声で詠み上げたお返しの一句。ゆらぐ視界の中でも、龍が目を見張っているのは分かった。
だから、「……してやったり」とニヤリと口角を上げてしまう。
「アホか」と悔しそうに吐かれたひと言。結局、私たちはどこまでも甘さ満点とはいかないようだ。
静かなオフィスでふたりで笑い合っていれば、「幸せにするよ」と彼が私の耳元で囁いてくれた。
こうして、私たちだけの甘いキスは永遠に続く。——まるで時が止まったかのように、ずっとずっと……。
【続*時を止めるキスを―Love is...―★終】