square moon
僕は気付けば、父が僕の父になった年齢になっていたが
未だ独身。
弟のトモも浪人して専門学校入ったと思ったらその後短大に行ったりで社会に出るのはだいぶゆっくりだった。
トモももちろん独身。
そんなわけで孫の顔を見せてやれなかった。
心残りではある。
だが、苦しまず逝ったことは少し気が楽だった。
父が亡くなり、
葬式にはたくさんの人が来てくれた。
父の教え子もたくさんきて
父の思い出話をたくさんしてくれた。
その中で
一人気になった人がいた。40代くらいらだろうか。
小柄で華奢な女性だった。
化粧っ気がなく綺麗、とはいえないが
なぜか印象に残った。
斎場で父の遺影を見つめ
目に涙を浮かべ一人佇んでいた。
棺に入った父の頭をなで
笑っているとも泣いているとも言えない
慈しむような表情で父を眺めていた。
その表情は
彼女の方がだいぶ父より年下だろうに
まるで子供に向けるような顔だった。
誰も斎場にいなくなっても
彼女は父を撫で続けていた。
僕は遠くでそれを眺めていた。
すると、その女性は
棺の中の父に
そっとキスした。
その後彼女は父に手を合わせ
背中を震わせていたが
ふっと顔をあげ父の棺に一礼すると
振り返り一歩一歩歩いて出ていった。
ロビーに僕がいたことに気づき
驚いた顔をしたが
僕に向き直り深々と頭を下げた。
僕も頭を下げ返し
『ありがとうございました。』
といった。
『この度は…』
そういうと彼女は声にならなくなり
肩を震わせた。
『あの…父とは…?』
と僕が聞くと
『あ、あの…教え子です。』
と答えた。
『え、どこでですか?』
『あ、あの…えっと…』
となぜか焦っていた。
『あ、I中です。』
と答えた。
『どうぞ、お気を落とさず…』
といい、僕の肩をさするようにしてくれた。
そういうと一礼し、彼女は出ていった。
『ずいぶん遅くまでいたね…
あれ誰?』
と気づくとトモは後ろにいて、トモが僕に聞いてきた。
『あぁ、教え子だって』
未だ独身。
弟のトモも浪人して専門学校入ったと思ったらその後短大に行ったりで社会に出るのはだいぶゆっくりだった。
トモももちろん独身。
そんなわけで孫の顔を見せてやれなかった。
心残りではある。
だが、苦しまず逝ったことは少し気が楽だった。
父が亡くなり、
葬式にはたくさんの人が来てくれた。
父の教え子もたくさんきて
父の思い出話をたくさんしてくれた。
その中で
一人気になった人がいた。40代くらいらだろうか。
小柄で華奢な女性だった。
化粧っ気がなく綺麗、とはいえないが
なぜか印象に残った。
斎場で父の遺影を見つめ
目に涙を浮かべ一人佇んでいた。
棺に入った父の頭をなで
笑っているとも泣いているとも言えない
慈しむような表情で父を眺めていた。
その表情は
彼女の方がだいぶ父より年下だろうに
まるで子供に向けるような顔だった。
誰も斎場にいなくなっても
彼女は父を撫で続けていた。
僕は遠くでそれを眺めていた。
すると、その女性は
棺の中の父に
そっとキスした。
その後彼女は父に手を合わせ
背中を震わせていたが
ふっと顔をあげ父の棺に一礼すると
振り返り一歩一歩歩いて出ていった。
ロビーに僕がいたことに気づき
驚いた顔をしたが
僕に向き直り深々と頭を下げた。
僕も頭を下げ返し
『ありがとうございました。』
といった。
『この度は…』
そういうと彼女は声にならなくなり
肩を震わせた。
『あの…父とは…?』
と僕が聞くと
『あ、あの…教え子です。』
と答えた。
『え、どこでですか?』
『あ、あの…えっと…』
となぜか焦っていた。
『あ、I中です。』
と答えた。
『どうぞ、お気を落とさず…』
といい、僕の肩をさするようにしてくれた。
そういうと一礼し、彼女は出ていった。
『ずいぶん遅くまでいたね…
あれ誰?』
と気づくとトモは後ろにいて、トモが僕に聞いてきた。
『あぁ、教え子だって』