square moon

『ねぇ、ユウさん。
何を知りたいの？』
彼女は強い目で僕を見つめたままいった。
『あの人…あなたのお父さんは
もういないのよね。
会いたくても会えないのよね。
あの人がいない今
彼と私の関係を知ってどうする？』

知ってもどうにもならない。
それはわかってる。
僕は何のために彼女に問いただしているのだろう。

『もしかしたら、お父さんとお母さんの離婚の原因が私だと？』
『いや…そういうわけでは…』
『それだけは違う。
私が彼と出会ったのは彼が離婚した後だから。
彼に誓えるわ。』
少し柔らかい表情になって彼女は僕にいった。

『彼と出会ったのは、あなたが高校に入ったか入らないか、くらいの時でね。
その頃は時々連絡とる程度だったの。

ほら、彼、うつ病になったでしょ？
休職して、その時に連絡がきてね。』

懐かしそうな表情で彼女は話した。
『私、その半年前にね。友人を自殺で亡くして…
その事があったから彼のことは死なせない、と思って。
私の勝手な思い入れだけど。』
今にも泣き出しそうな表情で彼女は話した。
『でも、彼に会えたのは彼が病気になって1年後、かな。
そのあとは私心配でね。
割と頻繁に連絡とるようになって
多ければ月に1回くらいかな。
会うようになったの。』
彼女は、僕は顔を見上げて
『どんな形でも彼を励ましてあげられれば、と思って会ってたんだよね。』
と言った。

『彼が私といることで励まされてたかは疑問だけど。
でも時々会っては愚痴こぼしてた。
お互いに。』
少しだけ彼女は笑った。

『お父さんと私の関係は、そんなところかな。』
そういうと僕をじっと見つめた。

『私がお父さんとのいえることは、こんなことかな。』

そういうと彼女は笑った。

『お父さんね、うつになったとき
死にたいと思ったこともあったんだって。
でもね、こんな俺でも必要としてくれる子供たちがいる、って思い直したって。
そういってた。
だから、実際は私は励ましてあげられなかったと思うんだけどね。』