君だけに、そっとI love you.
慌ててスマホを握る菊恵。
「あっ、……もしもし?」
「吉井さん。雨だね──」
「あっ、雨!?って、……わっ、私のせいじゃないから、ね……」
急に周翼の頭の中に疑問符が浮かぶ。
「いやっ……。誰も……、吉井さんのせいだとか──」
焦った菊恵が思わず手のひらで口を軽く塞ぐ。
ついさっきまで 雨女のことばかりをぶつくさと言っていたから、“雨”という言葉に過敏に反応をしてしまったんだ。
「ごめん。私、昔から雨女で……。今日のバーベキュー、駄目になって残念だったね」
「楽しみにしていたけれど、この天候じゃ仕方がないよ。って、吉井さん、雨女とか信じるタイプなんだね」
「雨女。うん」
「俺も、雨男──」
えっ、坂口くん、今、何て言いましたか?
ひゃっほー、雨男!
そっかぁー、雨を降らせているのは雨女だけじゃなかったんだ。
つい、うっかりしていた。
雨男もいたんだ。
坂口くん、私の仲間じゃないの!
うれしい~っ!!
天気が最悪でバーベキューが流れて、……気分が一気に沈んでいたけれど。
どうしてこんなに気分が晴れ晴れしいんだろう。
坂口くん、“雨男”なんかじゃ全然ないよ。
私の気持ちをこんなに晴天にしてくれたから──。