君だけに、そっとI love you.
──2年2組。
今日から一学期が始まる。
これから一年間私がお世話になる教室。
「よろしくね」と深呼吸をした後に教室の前の扉に手をかけ、ガラガラと扉を開ける。
担任の先生はまだ来ていない様子。
色々な話声があちらこちらから聞こえる教室。
いたいた、坂口 周翼。
窓側の席で肘を付いて空を眺めている──。
確か、一年前にもこんな景色を見た記憶がはっきりと頭の中に残っている。
もしかして、また電線に止まっている雀でも数えているんだろうか?
そんな坂口くんの隣の席は、またまた私だ。
隣同士、 なんだか多いよね。
今日の坂口くんはちょっと眠そうな顔をしている。
春だからかなー。
きょとんとした表情の周翼が菊恵の顔をじっと見る。
「吉井さん、鼻から、鼻毛が出ているよ──」
「ええっ、え──!?」
驚きのあまりに顔を真っ赤にした菊恵が即座に手で鼻を隠した。
──「おはよう!」とかの挨拶じゃなくて、いきなり鼻毛の話。
冗談じゃないわよ。
声を殺してお腹を抱えなが笑っている周翼。
すぐに手鏡で鼻の穴を念入りに点検をしている菊恵。
ないじゃん、ないじゃん……、鼻毛なんて、一本も出てないじゃん!
もう、ヤラレタ!
周翼のことをきつく睨む菊恵。
嬉しそうに口角を上げて笑う周翼。
まるで、小学生の男の子みたいな笑顔。
「また、一年間よろしく」
なかなか直ぐには機嫌が戻らない菊恵。
はあっー、なにが『また、一年間よろしく』なの!
私のことをからかって、笑っておいて。
ぷいっと周翼の反対側に顔を向ける菊恵。
本当、坂口くんの性格、一年経ってもあんまり変わっていないよね。