君だけに、そっとI love you.

後輩の高山さんが急に崩れるように地面に座りこむ。





「……吉井先輩。……私、もう駄目です」




肩で息をして息苦しそうに話す後輩の高谷。





顔色は青白く唇の色もチアノーゼが出て紫色になっている。





高山病で倒れたのは後輩の高谷さんだった。





後輩の高谷は菊恵の腕にしがみつき目に涙をいっぱい浮かべながら「……吉井先輩。私、すみません、……もうこれ以上登ることが出来ません」と
力を振り絞るように言った。





後輩の高谷さんのような高山病にかかってしまったものはもうこれ以上登山を続けることは非常に厳しく、下山をせざる終えない。




たまたま通りかかった富士登山専門のツアーガイドの人も後輩の高谷の状態を確認し強く下山を進めた。





後輩の高谷が「皆と一緒に富士山の御来光を見たかったのに……」と大粒の悔し涙をぽろぽろと次々とこぼす。





肩を震わせている高谷さんを見ていると私まで涙が出てきて自然と高谷さんの肩に手をまわし背中をぽんぽんと優しくたたいていた。







「よく、高谷さん、本当にここまで頑張ったよ………………」






軽く抱き締めた後輩の高谷さんの体は冷えていて時々小刻みに震えていた。

< 237 / 268 >

この作品をシェア

pagetop