君だけに、そっとI love you.


このままずっと時間が止まってしまえばいいのに──。







この時ばかりは、遠くに感じていた吉井さんがやっと自分の所へ戻ってきたような気がした。






吉井さんと二人で見た山頂からの綺麗な景色は、忘れないようにしっかりと目に焼きつけておこうと思った。







太陽の眩しい光が掬惠の瞳の中に差し込んだ瞬間、ふと一瞬だけ時間がとまった感覚がした。







掬惠の頭の中で後輩の高谷さんの顔が浮かぶ。








私と話す時の楽しそうな笑顔の高谷さんの顔。






そして、下山をする時に涙を流していた高谷さんの悲しそうな顔。











いけない、いけない、今、私なにをしているんだろう!





我にかえった。







後輩の高谷さんは坂口くんのことが好きなんだ。









そして、掬惠は両手の指先に少し力を入れて周翼の体からそっと自分を離した。









「……この景色、後輩の高谷さんにも見せてあげたかったね」





「あぁ、うん……」





少し寂しげな瞳で戸惑った様子の周翼。

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