君だけに、そっとI love you.


「──どうして?」






「俺は、後輩の高谷さんとそんなに話をしたことがないし。俺よりも、同じマネージャーの吉井さんの方が話しやすいんじゃないの」







坂口くんの鈍感──。








お願いだから、後輩の高谷さんのことをしっかりとフォローしてあげてよ。








いっつも、凄いボールが目の前に飛んできたらその大きくてごつい手で全身全霊で受け止めているくせに。






さっき、わけわからない私を優しく抱き締めてくれたみたいに。






後輩の高谷さんに優しくフォローしてあげてよ。





……って、私……、本音を少し言うと──。






さっき、坂口くんに抱き締めてもらった時、少し心地が良かった。





なんだろう、この感情。





安心をする感覚。







小さかった頃、お父さんにぎゅーってハグをしてもらった感覚にも似ているような。





私、坂口くんに心を……まさか奪われかけている?





まさか、まさかね──。





いけない、いけなーっい!!





坂口くん、もう、こっちを見ないで!






だ、だからねっ、後輩の高谷さんが坂口くんのことを好きなんだから。




まったく、私が動揺をしてどうするんだよ。





富士登山、色々と試される試練があった──。



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