君だけに、そっとI love you.



色んな考えが掬恵の頭の中を交差する。







そうこうしていると、坂口 周翼と小川 まゆが楽しそうに会話をしながら掬恵に気づかずにカゴの中に入っているお絞りをそれぞれ1個ずつ取っていき、そのまま歩いていって通りすぎていった。







空っぽになったカゴを持ち俯いて立ち尽くしている掬恵。






あれっ?









──私って、気づかれもしなかった……。







それって、果たして喜んでも良いことなのだろうか?






それとも、やっぱり……私の存在感が薄いせいで吉井 掬恵が今ここにいるということを分かってもらえなかったのでは──。






あっさりと通りすぎられると、何だか寂しものがある──。






何だろう、この虚無感。






砂漠に一人だけ取り残されたみたいな凄く悲しい感じ。


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