君だけに、そっとI love you.
ベンチにいる溝口先生が掬恵を呼ぶ。
「吉井、ちょっと、おいで!」
「何ですか?」
「お前にええもんやるわ!」
“ええもん”っていったい何ですか?と冴えない表情の掬恵が首を傾げながら両手をそっと差し出した。
溝口先生から受け取ったのは四角い形のお菓子の空き缶だった。
「今日のクラブのメニューが全部終わったら、その缶に一人500円の部費を集めて、明日また俺に持ってきてくれへんか?」
──私は、今、気づいた。
溝口先生のペースに上手く乗せられてサッカー部のマネージャーの仕事を少しずつさせられていることに──。
不覚だった、どうしてもっと早く気づかなかったんだろう。
私のバカバカッ!と頭を両手で叩いて悔しそうな顔をしてる掬恵。