とある少女の希望の光
「最近、外に出るとき以外は包帯をしていないんだな」
「そうなの。私もこの腕ときっちり向き合うつもりだから少しの変化も見逃したくないもの」
「…成長したな、サラ」
「何言ってるの?ジルのおかげよ。もう私も19になるわ。いつまでも子供じゃないんだから」
髪を丁寧にブラシでとくサラをジルは優しい瞳で見つめる。
幸せになってくれ、そんな思いを込めて。
あれから一年が過ぎた。
今のところ何事もなくサラは元気だ。
クローに連絡を取るとトキも同じように元気らしい。
…あと一年。
このままいけば全て上手くいく。
「サラ、明日は朝から隣国へ行ってくる。お前は家で大人しくしていろ。夕刻には帰るようにする」
「わかったわ。ちゃんとじっとしておくから心配しないで」
「土産も買ってくるからな。何がいい」
「わあ、嬉しい!そうね…髪留めが良いわ!ちょうど新しいのが欲しいと思ってたの!」
「わかった。きっとサラに似合う物を買ってこよう」
「ありがとう、ジル!」
ジルは思った。
この笑顔を側で見れるのも、あと一年だ。
幸せになって欲しいけれど自分の元から去って行くのはやはり寂しい。
娘を持つ父親というのは、皆こんな気持ちなのか、と。