とある少女の希望の光
「サラ!?どうしたんだ、サラ!」
ジルの叫びが夕刻の家に響き渡る。
「なにがあったんだ…。サラ、返事をしろ!サラ!」
ジルが家に帰ると、サラが倒れていた。
テーブルの上には二人分の食事が用意されている。
…まだ暖かい。
倒れてそう時間はたっていないと判断したジルはサラを抱きかかえ、ベッドへ運んだ。
カシャン、と音をたてて髪留めが落ちた。
この一年、何事もなかったのに。
異常に熱いサラの右腕を両手で包み、祈るように頭を当てた。
脈は正常に打っている。
ドクターを呼ぶべきか迷った挙句、一晩様子を見ることに決めた。
「どうか…連れていかないでくれ。ここまで生き延びたんだ。幸せになって欲しいんだ。じゃないとこの子は…」
”この二年が山場になる”
クローの言葉がジルの頭で何度となく繰り返される。
「頼む…サラ、持ち堪えてくれ。こんな時に私は何もしてやれない。お前に何も返してやれない…」