とある少女の希望の光
ジルは見上げているのが辛くなって俯いた。
自分の隣には誰もいない。
結婚もしなかった。恋人もいなかった。
これからの人生を寄り添ってくれる人はジルにはいない。
だけど大切な娘がいた。
信じられないことに彼女は呪われながら生まれてきた。
何度も崩れそうになりながらも前を向いていた彼女は、それはそれは美しかった。
涙が零れた。
「…お前は、私の手を離れていくのだな…。今日、この日に」
一人の女性が走っている。
庭から城へ入り、バルコニーへと。
息を切らしながら階段を駆け上がり、目指すは王子様のもと。
彼女は右腕を触った。
脈を感じる。体温を持っている。
ちゃんと、生きている。
綺麗にセットした髪は乱れ、ドレスの裾を引きずり、踵の高いピンヒールは階段の下の方に置いてきた。
こんな姿になっても、必死で何かを追い求めて走る姿はとても綺麗だ。