とある少女の希望の光
すぐには近寄れないので話しかけるタイミングを伺う。
「ねえジル。この皆の視線が突き刺さる感じだけは未だに慣れないわ」
正装している男の人も、綺麗なドレスの女の人も、蝶ネクタイのボーイも、サラを見ているような気がする。
「それはお前が美しいからだよ。何も恐れることはないから堂々としていなさい」
ジルはそう言ってくれるけれどサラには腕を見られている気がして仕方がない。
いつもジルはこういう煌びやかな世界にサラを連れ出してくれる。
こんな場所に無縁だと思っていたサラはとても嬉しく感じるし感謝しているのだけど、腕の包帯を取って外に出る勇気は無い。
まだまだ未熟者だ。
これを武器にすることが出来れば自分の世界はきっともっと広がる。それはサラ自身わかってはいる。
だけど現実はそう甘くはない。これを受け入れてくれる人がこの先現れるとも思っていない。
「ジル!よく来てくれたね」
「これはクロー様。本日はこのような席に私を招いてくださったこと、心から感謝申し上げます」
「やめてくれ、お前と話せばちょっとは心が休まると思って話しかけたんだがな」
「なんだよ、最初の挨拶ぐらいまともにさせてくれ」
二人の会話からそうとう親しい仲なのだと予想出来る。
この会場にクローと互角に話せる人なんてほかにいないだろう。