明日はきらめく星になっても
「前島さん…」
「はい…何ですか?」
返事はするものの、明るさがない。顔もぼんやりして、どこか能面のようだ。
「前島さんは、この園舎が何の木材で出来ているか知ってるかね?」
「いいえ…知りませんけど…」
興味なさそうな感じだ。
(…つまりは、そんな話をするような気分でもないということか…)
「ここの園舎の多くは、“あすなろ” という木材を使っているらしいよ」
「“あすなろ” …?なんだか、聞いたことある名前です」
「漢字をあてるとしたら、こうだよ」
“翌檜”
「…この字 …ヒノキですよね⁈ あのタンスとかによく使われてる… 」
「そうだよ。“あすなろ” は明日は檜になれると、自分が信じている樹なんだ」
「へぇ…面白い…」
人の話に、心を傾けて聞く。前島さんの聴く姿勢は、いつも感心させられる。
「 “ ヒノキになりたい。ヒノキになるんだ ” …そう思い続けても、“あすなろ” はいつまで経っても “あすなろ” のままだ。毎日毎日、明日が来ても、明後日が来ても…」
何が言いたいのか分からん顔をしておる。実に興味深い。
「でも人は明日が来たら、違う自分になってしまうことだってあり得るだろう?」
唐突な言葉にきょとん…とした。
でも、何やら言いたいことに気付いたらしい。深刻な表情で呟いた。
「それは…“ 死ぬ ” って意味ですか…⁈ 」
「まぁ、そうだね…」
私の言葉に苦い顔をした。けれど、目を伏せてこんな風に言った。
「それと同じ話を…つい最近しました…」
誰とは言わない。でも多分、彼氏とだろう。
何やら物憂げな表情で、考え込んでいた。
「…前島さん、僕が何故こんな話をするか、分かるかね?」
“ あすなろ ” は “ ヒノキ ” になれずとも、明日がある。しかし、人は分からないーーー。
「……早く…仲直りしなさいって…感じですか…?」
「そう。人間は、翌檜のように常に明日がある訳じゃないんだ。僕はこの年になって、しみじみ今日一日の大切さを感じる事があるよ。若い人達は、そうでないかもしれないけど…」
寄る年波、つくづく思い知らされる時間の重さ。老いも若きも、それだけは平等だ。
「いえっ!それは私も考えてますっ‼︎ 今日が大事な一日だってことくらい!だけど……」
大きな粒が零れ落ちてきた。
「だけど……」
声にならず、涙の方が落ちてくる。
「あれあれ…」
こりゃしもうた。ちょっと説教じみたか…。
「はい…何ですか?」
返事はするものの、明るさがない。顔もぼんやりして、どこか能面のようだ。
「前島さんは、この園舎が何の木材で出来ているか知ってるかね?」
「いいえ…知りませんけど…」
興味なさそうな感じだ。
(…つまりは、そんな話をするような気分でもないということか…)
「ここの園舎の多くは、“あすなろ” という木材を使っているらしいよ」
「“あすなろ” …?なんだか、聞いたことある名前です」
「漢字をあてるとしたら、こうだよ」
“翌檜”
「…この字 …ヒノキですよね⁈ あのタンスとかによく使われてる… 」
「そうだよ。“あすなろ” は明日は檜になれると、自分が信じている樹なんだ」
「へぇ…面白い…」
人の話に、心を傾けて聞く。前島さんの聴く姿勢は、いつも感心させられる。
「 “ ヒノキになりたい。ヒノキになるんだ ” …そう思い続けても、“あすなろ” はいつまで経っても “あすなろ” のままだ。毎日毎日、明日が来ても、明後日が来ても…」
何が言いたいのか分からん顔をしておる。実に興味深い。
「でも人は明日が来たら、違う自分になってしまうことだってあり得るだろう?」
唐突な言葉にきょとん…とした。
でも、何やら言いたいことに気付いたらしい。深刻な表情で呟いた。
「それは…“ 死ぬ ” って意味ですか…⁈ 」
「まぁ、そうだね…」
私の言葉に苦い顔をした。けれど、目を伏せてこんな風に言った。
「それと同じ話を…つい最近しました…」
誰とは言わない。でも多分、彼氏とだろう。
何やら物憂げな表情で、考え込んでいた。
「…前島さん、僕が何故こんな話をするか、分かるかね?」
“ あすなろ ” は “ ヒノキ ” になれずとも、明日がある。しかし、人は分からないーーー。
「……早く…仲直りしなさいって…感じですか…?」
「そう。人間は、翌檜のように常に明日がある訳じゃないんだ。僕はこの年になって、しみじみ今日一日の大切さを感じる事があるよ。若い人達は、そうでないかもしれないけど…」
寄る年波、つくづく思い知らされる時間の重さ。老いも若きも、それだけは平等だ。
「いえっ!それは私も考えてますっ‼︎ 今日が大事な一日だってことくらい!だけど……」
大きな粒が零れ落ちてきた。
「だけど……」
声にならず、涙の方が落ちてくる。
「あれあれ…」
こりゃしもうた。ちょっと説教じみたか…。