嗤うペテン師
「冗談だよ冗談。いいリアクションするね」
「だ、だよなぁ?」
眉尻を下げ、緊張していた体の力を抜く。
全身で安堵を表す彼に、私は理解した。
……彼は私との子なんて望んじゃいない。
寂しがることなんて何もない。初めからわかっていたことだ。
彼の彼女…否、婚約者は、彼の会社の社長の娘らしい。お金もある。この結婚で彼の将来も約束される。
しかもその彼女自体とてもいい子だ。料理もでき、頭も良くて優しい。そして何より、彼を愛している。
どこをどう取ったって、私なんかよりもずっと彼のそばにいるべき人物だ。
彼を幸せにするのは彼女しかいない。